プレシジョンメディシンとは
個々の患者に最適化された治療を提供することで、医療の質を向上させる革新的なアプローチです。主にがん治療に役立っており、個人に合わせた治療を選択できるようになりました。
プレシジョンメディシンの概要については別の記事でまとめています。
薬剤師とがんゲノム医療の連携
プレシジョンメディシンの進展に伴い、がんゲノム医療における薬剤師の関与が注目されています。日本のがんゲノム医療中核拠点病院および連携拠点病院における調査では、エキスパートパネルへの参加や治療方針決定における薬剤師の役割が明らかになっています。全体の2割の施設で薬剤師がエキスパートパネルに参加しており、がん専門の病院ではその割合が6割に上ります。
治験情報のアクセス性と薬剤師の役割
次世代シーケンサーによる遺伝子解析が進む中、がんの増殖に関わる遺伝子異常が特定されるケースが増加しています。しかし、これらの遺伝子異常に対応する薬剤が保険で承認されていない場合が多く、患者は適切な治験に参加できる場所を探す必要があります。現在、最新の治験情報は限られており、学内や関連施設で実施されている治験情報のみを提供している場合が多いです。将来的にはより広範な治験情報を検索サイトを通じて提供する計画です。
プレシジョンメディシンの最前線
プレシジョンメディシンで注目されているのが、「MONSTAR-SCREEN」です。がん治療の最新治験情報を集約し、アクセスしやすいデータベースの構築が進められています。このデータベースは、国内外の治験情報を網羅し、患者や医療従事者が迅速に治療オプションを探せるようにすることを目的としています。
MONSTAR-SCREENの取り組みとその進展
MONSTAR-SCREENは、がん遺伝子スクリーニング事業です。国立がん研究センター等が連携し、消化器がん患者さんにパーソナライズされた医療を提供することを目指している事業です。
このプロジェクトは、特定の遺伝子異常を持つ患者さんに対して、それに応じた治療薬の臨床試験への参加機会を提供し、新たな治療法へのアクセスを可能にしています。2014年の開始以来、2017年12月までに4000例を超える消化器がん患者さんがこのプログラムに登録されました。
分子標的治療薬と保険適応の課題
プレシジョンメディシンの実用化には、保険適応の枠組みを見直すことが必要です。例えば、HER2遺伝子の増幅は乳がんだけでなく、胃がんや肺がんなど複数のがん種で見られますが、がん種によっては保険適応外であるため、効果的な分子標的治療薬を使用できないことがあります。異なるがん種であっても、エビデンスに基づいて薬剤を使用できるように保険適用の仕組みを変えることが、プレシジョンメディシンの普及には不可欠です。
薬剤師に期待される役割
薬剤師は、最新の治験情報を把握し、患者に適切な情報提供とサポートを行う重要な役割を担います。プレシジョンメディシンの進展は、がん医療における薬剤師の役割をより重要なものにし、患者一人ひとりに合わせた治療の実現に向けて、薬剤師の知識と専門性がますます求められています。プレシジョンメディシンと薬剤師の専門性が融合することで、がん治療の質はさらに向上することでしょう。
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